フランス ナント市 視察報告


「人」が、街をつくる。


 フランスで最も住みやすい都市とも言われるナント市(人口28万人、都市圏人口71万人、2006年現在8番目の都市)と、LRTによる都市造りで、欧州のモデルともなったフランスの古都・ストラスブール。両都市とも公共交通が整備された美しい都市です。
 人々が集う美しい街を歩いて観て感じたのは、街路も都市も、一過性ではなく長い時系列で計画され造られているという事です。街を守り育てる思想を持っていると感じました。人々の思想が「街」という形に現れ、その「人」の営為の積み重ねで、個性と歴史を持った、ショッピングセンター等ではない本物の街を造っているのだと感じました。
 新潟市も姉妹都市ナント市から胸を張って視察団を呼べる街にして行きたいですね。


ナント市



1, トラム(LRT)=横移動のエレベーター


 ナントでは、公共交通の配置が、計画的に行われている。3路線43kmのLRT(Light Rail Transit,次世代型路面電車)が基幹軸として整備され、「トラム」と呼ばれている。

 体験する以前はピンと来なかった「LRTは、横移動のエレベーター」という表現が、3分間程度で次から次へと来るトラムを観ていると、まさしくその通りと合点が行った。数十年前から運行している欧州のトラムが、近年、LRTとして再整備され支持を受けた理由のひとつが、運行本数の頻発化による利便性の拡大ではないかと感じた。

 乗降時に、支払い・改札無しで乗降車できるのでスムーズ。停車時間も短く効率的。
ホームへのアクセスや乗降が楽なせいかベビーカーの利用も頻繁に行われている。(段差の大きい旧型車両も、台数は少ないが走行している。)市街地では、歩行者はバスの前は横断を試みる(歩行者優先に見える)が、トラムの進路は塞がないように歩く。



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2,専用レーンのバスウェイ(BRT, Bus Rapid Transit,直訳:迅速バス通行)


 1路線7kmのバスウェイ(BRT)が整備。道路上の2車線と専用停車場をBRTとして占有する。(一部区間は1車線)。トラム(LRT)の輸送量が必要とされない、利用客5万人以下の路線にBRTが整備される。運行頻度はトラムより少ない。「ゾーン料金」 のため改札無しで後部ドアから乗降車できて、停車時間も短くて効率的。トラムと共通キップで乗車。専用レーンでもあるため、トラムと比較して利用感はそう変わらない。後部乗降口のステップは自動伸縮して段差はゼロ。ベビーカーでも使用しやすい。

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3,路線バス


 LRT停車場の隣に並ぶように停車し、乗換えしやすい配置になっている。
 トリップ数ではトラムが最大だが、路線バスの路線総延長は、トラムより遥かに長く公共交通では最長となる。基幹路線以外のルートを広くカバーして市民の利便性に寄与。ラッシュ時は、多数の路線バスが街路を通行し、自家用車よりも目立つほど。左下写真は夜間バスの停留所。右写真は、屋根無しのバス停。信号の無い交差点を横断する歩行者のためにバスも停車してくれる。
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4,水上バス


水上バスも同じキップで乗船できる。左写真:水上バス乗場、右2枚:水上BARと船
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5,ゾーン運賃で、公共交通の「自由時間」


 乗車キップが「ゾーン制」なので、市内中心部は24時間券でも、1時間券でも、乗り換え・乗り降り自由の乗り放題。“階段を登っても良いけれど、丁度エレベーターが来たから乗ろう”という感じで便利に何度も乗車した。
 路線や車両も重要だが、利用者にとって重要なのが「ゾーン制の運賃」による利便性の高さ。(信用乗車方式とも呼ぶ)バスも、トラムも、水上バスも時間内乗り放題の運賃制度のため、気軽に使える市民の足となっている。
 タッチパネル式自動販売機で購入後、キップを車内等の刻印機に差して「使用開始時間」を印字すれば、そこから交通の「自由時間」がスタートする。1時間券が約200円、24時間券が約500円。信用乗車方式のため、乗降時の支払・改札は無し。1列にならんで下車する必要が無い。乗降時間=停車時間も短くて効率的。
(右写真は24時間キップの表裏。この12日17:05の刻印で、13日17:04まで、24時間使用可能になる。)
「移動は生活者の自由」(清水和夫氏談)という思想か。
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6,ナント市交通局にて説明(ラミアさん、ニコルさん、セドリックさんより)


 市街地移動計画(PDU)により、自動車利用を10年間で61%から50%に下げるのが目標。トラム整備は「クオリティ・オブ・ライフ」と「環境」を考えての施策。
車の一生の95%は、停車中との研究がある。路線の延長距離では、一般バスが最長だが、乗客のトリップ数ではトラムが最大で全体の63%を占める。雇用の40%、商店の42%、児童生徒の50%、学生の86%がトラム沿線に存在。フランスでは、公共空間は私有であってはならない。ビル内など以外の駐車場は公共空間で、駐車場代金も自治体の収入になる。ナント市では1家庭に2台の車を所有しているが、街が広いほど公共交通機関は上手く行きやすい。
※右写真:待ち時間と路線表示。運行本数が多いため至便
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7,不正乗車への対応


 無賃乗車は、検札官が不定期に乗車して検札。罰金は、即金で約4000円、後からの納付で約6000円程度。未納付のままだと、さらに罰金が加算される。
潜在的不正乗車は25%程度と把握。検札の強化や、バス乗車時の運転手へのキップ提示などの対策で、約10%に低下すると予測している。


8,定期券


 行政15%、企業15%負担。通勤する従業員は3割引で購入可能。


9,パーク・アンド・ライド(P&R)


 6~7km郊外には、P&R駐車場が、トラムやバスウェイ(BRT)停車場附近の各所に設けられている。終着駅には数百台規模の大型のP&R駐車場が整備されている。空きが少なく見えるほど駐車場の利用率は高い。利用者はカードを用いて出庫する。収容可能台数の総計は7200台。P&Rは交通網の一部。
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10,放射状路線・環状路線・郊外路線


 需要の最も多い「放射状路線」は、輸送力の大きい「トラム(LRT)」を整備。
需要がトラム整備の5万人に満たない放射状路線(4号線)は、専用レーンバスのバスウェイ(BRT)を整備。環状線にはトラムの輸送力が必要なかったため、一般道路走行のバス路線を整備。さらに需要の少ない郊外線は、トラムやバスウェイの終着駅に接続。
 トラムやバスウェイ駅終点のP&R駐車場よりさらに郊外へは、複数のバス路線が枝のように運行されている。「tan」のロゴが付いたトラム、バス、水上バスには、同じキップで乗車できる。遠距離バスは、別会社が運行している。


11,歩行者優先道路


 車止め(ボラード)が設置された先へは、カード所有の搬入車両等しか進入できない。ボラード(右写真)は、カード使用で自動昇降する。中心街では歩行者が主役。安心して町歩きを楽しめる。
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12,道路

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 ほとんどの交差点に信号が無く、車は低速で交差点を通過する。歩行者が道路を横断する時は、ドライバーの目を見て渡っていけば、信号が無くても停まってくれる。道路空間は、トラム軌道、バスレーン、自家用車レーン、歩道、自転車レーン、緑地、広場、駐車用地などに空間配分されている。
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 中写真:駐車スペース。右写真:道路の中央部分が広場になっている。中心市街地内は最高速度30Km規制の「ゾーン30」などの政策で自動車の速度を抑え安全を図っている。自転車は車道通行が基本で、バスと自転車の共用レーンもある。




13,駐車場


 広場の地下や、裏通り路上など各所に、駐車場が設けられており、利用度も高い。各所にパーキングチケット発行機があり、駐車料金は15分間約50円、1時間約220円。中心部では路上駐車時間が、2時間の約540円が上限など、2~3時間を超えての長時間駐車が禁止されている。車の流入を抑えるために後述の運営会社によって中心部ほど駐車料金が高く設定されているが、それでも新潟市中心部よりも安い。路上駐車場の数は多いが、駐車制度自体が、トラムを基幹交通とする交通制度の下、制度設計されている。
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14,交通税


 事業者に、地方税として交通税が課せられ、公共交通の整備運用に用いられている。


15,交通の一元管理を行う運営会社


 公共交通の整備・運営は、運営会社「セミタン」行っている。ナント市と7年間の委託契約を結び、トラム整備から道路空間の配分、駐車場政策、自転車レンタルなど交通に関する政策を、一元管理している。セミタンは、ナント市が周辺自治体と組合を結成。既存バス会社1社を吸収、従業員を引き継ぎ、株式を自治体が持つ民間会社として1978年に設立された。社員1600名(内ドライバー1000人)。工事の施行も請負う。


16,反対派への対策


 公共交通の整備を行う前は、トラムは未知のものとして商店が反対。旧型のトラムを知る老年の方は、怖いなどと反対。ナント・セミタンのニコルさんにお尋ねしたところ、トラムの整備に反対した商店主たちに対しては、特別な策は用いていないが、「商店主たちに対して、トラム整備工事中の「営業補償」を行った。」と言うご説明でした。トラム整備後は、来店客が増えたため、商店主達はトラム賛成に変わった。世論調査では、51%だった賛成がトラム開通後は90%近くに上昇した。
 車に乗り続ける人に対しては、駐車料金を高くするなどの設置を行った。5万台の通行車両(5万トリップ?)があったら、トラム、バスウェイ等を造る。


17,町歩き


 街は、徒歩でも廻れるほどのコンパクトさ。一本道ではなく、中心街地区の道路が網の目のように結ばれ、どの通りを歩いても楽しめる。街路の人通りは多く見られる。カフェの店前にはテーブルと椅子があり、街路上でも食事や休憩を楽しめる。多くの店の前のテーブルを囲んで談笑する顔が見える。日が落ちても談笑の顔が絶えない。百貨店のラファイエットもあるが、規模はそれほど大きくない。ベビーカーを押す人や、若者も多い。ガイドの方によると郊外で田舎暮らしを楽しむ高齢者も多いらしい。右写真は1843年完成のアーケード街、パッサージュ・ポムレ。
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18,自転車


 レンタサイクルステーションがトラム停車場脇や市街地各所に設置され、登録カードがあれば利用できる。旅行者は、クレジットカードで借りる事が出来る様になっている。
自転車は車道通行が基本。バスレーンと自転車の共用レーンも見られる。セミタンがバス運転手に、自転車に対しての運転方法の教育も行っている。一般の自転車は、盗難に遭うためロックが確実な専用置き場にしか駐輪されていない。
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19,広場


 中心街各所に広場がある。野外カフェが並ぶ広場、噴水や池のある広場、土日に市場が立つ広場などがある。地下が駐車場になっている広場も多い。広場の周囲にはカフェがあり憩いの空間となっている。広場は町歩きに必須の拠点であり、市民の憩いの場。
(上段右写真:土日に市場が開かれる。下段右写真:道路中央に造られた広場。)
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20,カフェを楽しむ


 町歩きとカフェもワンセット。休んでから街巡り。
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21,姉妹都市の交流


 市庁舎の正面入口に、「新潟市の旗」。市庁舎内にあるレセプションルームで、助役さんご出席で、歓迎の立食パーティーのご招待を受けました。毎年訪問されて長年親交を積み上げてこられた、新潟フランス協会の方々の努力の賜物と、現地の方々の暖かい対応に感激しました。
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この記事へのコメント

horikawa
2012年06月03日 11:17
2012.5 未投稿だった写真を追加致しました。
Mariko
2013年02月20日 19:54
はじめまして、私は去年の秋からナントで暮らしています。
ナントに関する情報をインターネットで検索していてこの記事にたどり着きました。
私もナントと日本の結びつきを深めるためにブログサイトの開設を考えているのですが、その際はこの記事を紹介させて頂いても構わないでしょうか?
horikawa
2013年02月21日 11:22
Marikoさん はじめまして。
ナント1度しか行ったことがありませんが美しい町ですね。新潟も温故知新の美しい町にしていきたいところです。
ブログよろしければどうぞご紹介下さい。

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